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『リバーズ・エッジ』吉沢亮 単独インタビュー

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『リバーズ・エッジ』吉沢亮 単独インタビュー

自分自身も感情を出さないタイプ

取材・文:斉藤博昭 写真:中村嘉昭

1993~1994年の連載以来、今も読み継がれる岡崎京子の人気コミック「リバーズ・エッジ」。高校生たちの危うい日常を、リアルな感情で描く原作の魅力がそのまま実写化された本作で、同級生からいじめを受けつつも、どこか世の中を達観したようなゲイのキャラクター・山田を演じたのが吉沢亮だ。ここのところ出演作が続く彼にとっても、この山田役はハードルが高かったはず。役へのアプローチや、本作にかけた思いなどを語った。

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『銀魂』とは真逆のアプローチ

吉沢亮

Q:吉沢さんは、これまでもコミックの実写化作品には何度も出演されています。

つねに必要とされるのは、原作のキャラクターに外見を近づける作業ですね。とくに『銀魂』の沖田役などは、原作でもキャラクターが固定されているので、感情を込める以前に、どれだけ原作に近づけるかが重要でした。その点、『リバーズ・エッジ』の山田役はかなり違うアプローチでしたね。

Q:そのアプローチを具体的に聞かせてください。

『リバーズ・エッジ』の原作は、絵では描かれない「余白」のような部分が多いんです。ですからそこを自分で埋める必要があり、役と長い時間、向き合った感覚がありますね。演じ終わってしばらく経った今でも、忘れがたい思い出になっています。山田のことはもちろん、作品全体を想像しながらアプローチした感じです。

Q:「余白を埋める」とのことですが、山田は過剰な表情の変化はみせません。

山田は内側に溜め込んだ感情を外に出しませんからね。普通の男の子のようで、どこにでもいるタイプではない。感情には深く入り込んで演じるんですけど、わざとらしい表現は避ける、という難しい演技でした。その場に存在することだけを意識して、声のトーンとか表情の変化はあまり考えないようにしたんです。

Q:ただ、終盤のあるシーンで、山田がそれまでと一変した表情をみせます。

あぁ、あそこですね。じつは記憶にないんです(笑)。僕も完成した映像を観て、「なんであんな表情したんだろう」と不思議に思いました。いろんな感情が一気に押し寄せたんでしょうね。うれしさとか、悲しさとか……。

自分自身も感情を出さないタイプかも

吉沢亮

Q:演じながら、いろいろと苦労されたことが伝わってきます。

まわりから見た山田と本人のギャップや、彼の脳内を考える作業は、苦しくもあり、楽しさもあり……でした。でもそうやって悩む時間こそ、役者の醍醐味だと実感したのも事実です。

Q:そのあたりで、行定勲監督からは細かい演出があったのですか?

いえ、リハーサルでいくつか指示が出ただけで、本番ではほとんど僕ら演じる側に任せてくださいました。

Q:山田のキャラクターと、自分自身がシンクロする部分はありましたか?

そうですね、内面にいろいろと抱え込んで、外に出さない部分は、ちょっと自分にも似ている気がしました。僕も何でもかんでもまわりに打ち明けるタイプではないですから。日常生活で大っぴらにできないことを、演技で表現して、楽しんでいるところもあります(笑)。

つねに客観的に自分を見ている

吉沢亮

Q:同性を好きになる山田が自分の感情を抑えるように、俳優としての吉沢さんも日常の言動に気をつかっているのでしょうか?

そこまでは意識しないです(笑)。「これ言っちゃマズいな」と抑えることはありますが、山田のように人生を否定されることはない。山田に比べれば、気楽に毎日を過ごしてますよ(笑)。

Q:演じる役に引きずられることもない?

それは、ないですね。役に没入するという感覚を、まだ体験していないのかもしれませんが、つねに客観的に自分を見ている気がするんです。そのうえで、自分の感情を役というフィルターを通して出しているんじゃないでしょうか。

Q:『リバーズ・エッジ』では、肉体的にハードなシーンも多かったのでは?

全裸になるシーンは、アドレナリンを出しきって乗り越えたんですが(笑)、死体を探すみんなを止めに行く河原のシーンが過酷でしたね。走り回るうえに叫び続けるので、2回目くらいから酸欠で頭がグラグラして倒れそうでした。たしか4回くらい撮ったのですが、ふだん絶対に出さないような大声が要求されたし、カメラが回り続けるので、1回の体力消費量が半端じゃなくて(笑)。

Q:アクションはお好きですか?

肉体を動かすのは楽しいですけど、僕なんかよりアクションが得意な人がいっぱいいると思います(笑)。どちらかと言えば、思い切り発散するより、内に溜め込む演技が好きかもしれません。

時代を超える原作の魅力を実感

吉沢亮

Q:二階堂ふみさんとの共演は2回目ですね。

二階堂さんは、まわりの役者さんとの距離感とかコミュニケーションとか、つねに作品全体を意識していたようです。前回(『オオカミ少女と黒王子』)もそうでしたが、共演すると素直に役に入り込める。ずいぶんと助けられました。

Q:同年代のキャストが多い撮影現場はいかがでしたか?

撮影の後、みんなで一緒にご飯に行ったり、普通に青春してました(笑)。山田のような役を担当する場合、現場でも孤独でいた方がいいかとも思ったのですが、そこはあまり意識する必要もなく、みんなで協力して作品を作り上げた感じですね。

Q:その結果、完成した作品の印象は?

自分のシーンにはいろいろ反省する部分もありましたが、作品全体は面白かったです。原作の魅力が損なわれず、監督のアイデアもちりばめられ、ドロドロした部分もある青春ストーリーが、観る人に衝撃を与えるのではないでしょうか。

Q:原作が描かれたのは20年以上前ですが、吉沢さん自身、その魅力をどうとらえていますか?

僕が生まれた時代ですよね。今はSNSとかありますけど、過激な行為に走ってしまう若者特有のエネルギーとか、変わっていないと感じます。そういう普遍性が原作には備わっていると感じました。

Q:では最後に、役者としての今後の目標やポリシーを聞かせてください。

まったくないです。とにかくいろんな役をやって、そのすべてがチャレンジングだったらうれしいです。チャレンジして「どうしよう?」と悩んだとき、人間って本気が出せると思うんですよ。そういう瞬間を、これからも何度も経験していきたい。それだけです。


吉沢亮

この『リバーズ・エッジ』をはじめ、今年は出演映画の公開が相次ぎ、俳優としての本格的ブレイクを迎えそうな吉沢亮。今はほとんど休みがとれないという忙しい毎日を送っているようだが、その疲れもまったくみせず、実直かつ自然体でインタビューに答える姿は、じつに好印象だった。俳優としての個性は、おそらくこれから花開いていくのだろう。だからこそ、今この瞬間の、何にも染まっていないピュアな吉沢亮の魅力が、映画の作り手たちを引きつけるのかもしれない。

『リバーズ・エッジ』は2月16日より全国公開

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