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劇団ひとり、映画監督は「勘違い」しないとできない

劇団ひとり
劇団ひとり

 『陰日向に咲く』(2008)、『青天の霹靂』(2014)に続き、劇団ひとりが約7年間の試行錯誤を経て映画化した念願の最新作『浅草キッド』。ビートたけしが自ら作詞・作曲した同名楽曲と自叙伝を基に脚本も自ら手掛けた劇団監督は、「勘違いかもしれないけれど、皆さんが納得できる『浅草キッド』は自分にしかつくれない」という強い気持ちでメガホンを取ったという。そのあふれんばかりの情熱はいったいどこから生まれてくるのか?

劇団ひとり『浅草キッド』監督秘話語る【インタビュー動画】

 Netflix映画として世界190か国に配信される本作は、伝説の浅草芸人・深見千三郎(大泉洋)と若き日のタケシ(柳楽優弥)の厳しくも可笑しい師弟関係を人情味豊かに描く。舞台は昭和40年代の浅草。大学を中退し、お笑いの殿堂「浅草フランス座」に転がり込んだタケシは、数多くの人気芸人を育てた深見に弟子入り。ユニークな仲間たちと切磋琢磨しながら、やがてその才能を開花させていく。だが、テレビの普及によって演芸場の客入りは減る一方、タケシは苦渋の決断を下すことになる。

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『浅草キッド』は僕にしか撮れないと思い込むこと

 これまで小説や映画で、浅草芸人の生き様を丹念に描いてきた劇団ひとり監督にとって、『浅草キッド』とはどういう存在なのか。「たけしさんは僕にとって神様みたいな方だし、この楽曲や自叙伝も芸人の“バイブル”と言っても過言ではない。それに泥を塗るわけにはいかないので、正直、プレッシャーはものすごいものがありました」。そこまで重圧を感じていながら、自らの手で映画化したかった最大の理由は、「大切なものだからこそ、ほかの人には撮らせたくない」から。

 「過去に2回映像化されていて、両作ともすごく面白かった。ただ残念ながら、僕の観たい『浅草キッド』ではなかったんですよね。だから、映画化するなら自分でやるしかいない」と腹をくくったのだとか。「たぶん、僕以上にたけしさんをリスペクトしている方はたくさんいると思うし、あの時代の浅草に対してもっと強い憧れを抱いている方もいっぱいいると思いますが、お笑い芸人でありながら、監督や脚本家の経験もあるということなど総合的に判断すると、やっぱり僕しかいない。傲慢に聞こえるかもしれないけれど、そうやって“勘違い”をしないと映画監督なんてできない商売だし、次の一歩を思い切り踏み出せない」と胸の内を明かした。

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大泉洋と柳楽優弥に感じた師弟関係に嫉妬?!

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監督・脚本を務めた『浅草キッド』

 たけしを描くことに関してはなにより本人が存命なので問題はなかったが、師匠となる深見の情報は多少の資料が残っているだけ。その人と成りは、おおむね弟子だったたけしから直接「伝授してもらった」という劇団監督。「ありがたいことに、僕が映画化するということで、たけしさんが時間を割いてインタビューに応じてくださったんですが、とにかく深見師匠は照れ屋だったと。うれしい時には怒るし、悲しい時にはおちゃらける。全部逆を行く人で、自分の内面を隠そうとする。ストレートな優しさじゃないけれど、どこか温かさを感じるキャラクターを脚本の段階からかなりこだわって作り込みましたね」と述懐する。

 その甲斐あって、偶像化されていた深見が大泉によって命が吹き込まれ、不器用でかっこ良く、色気さえ感じる存在となった。そして、そこに転がり込んできた青年タケシ。「ほぼ順撮り(物語に沿って撮影)だったのですが、もう後半はヤキモチを焼くぐらい良い関係性が生まれて、声もかけづらくなっていましたね。例えば、行きつけの居酒屋(捕鯨船)で、深見と売れっ子になったタケシが、お客さんを巻き込んで昔の思い出話をするシーンがあるのですが、柳楽さんがいい感じにセリフを回せないので、演出プランを伝えに行こうとしたら、大泉さんが熱心に話し方をアドバイスしているんです。その光景が、まさに深見師匠とたけしさんみたいで……。これは邪魔しちゃいけないなと思って、その場をそっと離れましたね」と撮影当時を振り返った。

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映画監督とお笑い芸人との違いは潔さ!?

 本作で2本目の長編映画となった劇団ひとり監督だが、お笑い芸人と映画監督とは類似点も多いが、決定的に違うところもあるという。「基本的に芸人は、最初ネタ作るという意味では脚本家だし、コントや漫才というカタチに仕上げるという意味では演出家とも言えるので、5分~10分の尺の中で映画づくりの基礎が自然と培われていたのかもしれません。あとは考えることが癖になっている人種というのも共通点。ところが、これはあくまでも僕の個人的意見ですが、芸人の強みは、捨てる潔さがあること。映画監督は自分が撮ったシーンに愛着がありすぎてなかなか捨てられないと聞きますが、芸人はこのネタがウケない、スベると思ったらすぐに捨てられる。もうバッサリ(笑)。そこは長所かなと思っていますね」と持論を述べた。

 今回の作品を自己採点すると、「実際に撮ってみたら、うまくいかなかった部分も結構ありましたが、それは編集などでうまくカバーできたと思うので、総合的には及第点ですかね。これからみなさんに観ていただくので、なかには酷評される方も出てくるかもしれませんが、僕自身はベストを尽したと思っているので悔いはありません」とキッパリ。「ただ、これからも大好きな監督業を続けていくには、作品の評価がとても大事になってくるのでドキドキはしますね。どの仕事も一緒ですが、特にこういうお金がたくさんかかった大きな企画は、失敗すると次のチャンスがなかなかもらえない。だから、次回作を撮らせていただくためにも、たくさんの方に観ていただきたいですね」と願いを込めた。(取材・文:坂田正樹)

Netflix映画『浅草キッド』は全世界独占配信中

劇団ひとり監督、理想の『浅草キッド』を自分の手で撮りたかった インタビュー » 動画の詳細
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