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「どうする家康」最終回に松本潤のアイデアも 演出・村橋直樹、1年半にわたる並走に思いあふれる

最終回「神の君へ」より若かりし瀬名(有村架純)と家康(松本潤)
最終回「神の君へ」より若かりし瀬名(有村架純)と家康(松本潤) - (C)NHK

 大河ドラマ「どうする家康」(毎週日曜夜8時~NHK総合ほか)に演出として参加した村橋直樹が、1年半にわたって主人公・徳川家康を演じた松本潤の演技、17日放送の最終回で“殿(家康)”に家臣・本多正信(松山ケンイチ)が抱いた思いとシンクロした瞬間を振り返った(※ネタバレあり。最終回の詳細に触れています)。

【画像】号泣!最終回名場面集

 2017年の「おんな城主 直虎」、2021年の「青天を衝け」に続き、3作目の大河ドラマの演出を務めた村橋。『コンフィデンスマンJP』シリーズなどの古沢良太が脚本を手掛けた「どうする家康」では、家康と織田信長(岡田准一)との出会いを描いた第2回「兎と狼」、家臣・夏目広次(甲本雅裕)が家康の身代わりとなり命を燃やした第18回「真・三方ヶ原合戦」、家康の正室・瀬名(有村架純)が息子・信康(細田佳央太)と共に死に至った第25回「はるかに遠い夢」、家康と信長の別れを描く第28回「本能寺の変」、家康の側近だった本多忠勝(山田裕貴)、榊原康政(杉野遥亮)が人生の幕を引く第44回「徳川幕府誕生」などの名エピソードを担当してきた。

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~以下、最終回のネタバレを含みます~

 15分拡大で放送された17日の最終回「神の君へ」を担当した村橋は、家康の10代から70代までを演じた松本について「本質的には変わらない家康を演じ続けることは、どんなに胆力がいることだっただろう」と思いを巡らせる。本作で描いた家康は偉人、歴史上の人物としてではなく「個」にフォーカスしたことを前提に、その理由を以下のように語る。

 「古沢さんが描かれた家康というのはある種、巻き込まれ型の主人公。特に序盤は、時代のうねりに巻き込まれていく。今川家で生きていきたいと思っていたら、桶狭間の戦いで主君・今川義元(野村萬斎)が死に、信長につくことになる。後に妻子を死なせなければならなくなるなど、時代に翻弄され環境も激変していくけれど、彼の本質は変わらない。まさに最終回で描いていることですが、老獪なタヌキでも神の君でもなく、白兎のようなか弱き少年であったのでは……という描き方。それは最初からコンセプトとして決まっていたことです。ただ、松本さんからするとそれには“我慢”が必要になるわけで。おそらく、平凡な青年が闇落ちしていくみたいなことの方が、役者としても演じがいがあってやりやすいと思うんですね。だけど、松本さんはその変わっていかない家康っていうのを48回かけて演じなければならなかった」

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 最終回では、そんな我慢を貫いた松本を間近で見てきた自身と、家康に対してある言葉を放つ家臣の思いがシンクロする瞬間があったという。「松本さんはよくぞ1年半もの間、我慢して走ってくださったなと思います。視聴者の方々、大河ドラマファンの方々の中には偉人伝を期待される方もいらっしゃると思いますし、“家康はこうじゃない”“史実とかけ離れている”といった声も聞こえてきたと思います。最終回の終盤、僕の思いが重なるシーンがあって。今回、松本さんは大河ドラマ主演として一年半もの間、撮影漬けの日々を送り、内外さまざまなこともあって、ご本人もいろいろな思いを抱えていらしたかもしれません。本多正信の“長きにわたり、まことにご苦労さまでございました”というようなセリフがあるんですけど、僕も心の中でそう言っていました。そこはすごくシンクロして不思議な感覚になりました」

家臣たちに涙ながらに頭を下げ礼を言う家康

 なお、最終回では松本との会話がヒントになった場面も。「初期の段階から、松本さんが“家康が最後に家臣団全員にお礼を言うみたいなイメージがあるんだよね”とおっしゃっていて。家臣団たちが家康に“ありがとうございました”と感謝を述べたのちに家康が“こちらこそじゃ”って頭を下げるシーンで、死ぬ間際の独りぼっちの家康と、家臣たちに囲まれた鯉のエピソードをカットバックにするような編集にしているんですけど、そのイメージは松本さんとの雑談から生まれたものです。“家康が作ったものはこんなに大きいけど、個人としては報われないで死んでいくみたいな、そんなイメージがあるんだよね”みたいなことも話していて、それが最終回の雰囲気に活きた感じです」

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 村橋が演出を手掛けたエピソードの中で、個人的に印象に残っているシーンを問うと第2回「兎と狼」のクライマックスを挙げた。今川義元を亡くしたのち大樹寺に隠れていた家康が門を開け、裏切り者の松平昌久(角田晃広)に宣戦布告し、家臣たちに“そなたたちのことはわしが守る!”と言い放つ場面、そして家臣たちを守るために腹を切るのか、切らないのか、涙ながらに本多忠勝と問答する場面だ。

 「それまでは松本さんは計算してお芝居する方だと思っていたんです。台本のシーンの意図を一つ一つ解釈して、逆算して丁寧に作られていくイメージだったんですけど、そのシーンでは計算をとっぱらった松本さんの俳優としての最大出力を感じました。だから僕らは松本さんのこの部分をなるべく出していかなきゃいけないなと。松本さんは逆算の演技もできるし、計算外のこともできる幅広さがありますが“すっ裸の松本潤を撮りたい”と強く感じたシーンとして強く印象に残っています」と想定外の松本に遭遇した喜びを懐かしそうに振り返った。(取材・文 編集部・石井百合子)

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