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2003年10月

私的映画宣言

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映画ライター
このコーナーが始まって一年になりまして、今回で卒業ということに相成りました。私の駄文で腹を立てた方、どうぞひらにお許しを。これからもこのコーナーをよろしくお願いいたします。それではまたお会いする日まで。
ライター
今月はやけに好きな映画が多かったもんで、いつになく☆を乱発気味。ところで、スウェーデン映画の『エヴァとステファンとすてきな家族』が気に入ってます。70年代で、共同体生活をしているちとヘンな人々のヘンな話ですが、要は人間一人じゃ生きられないってな話。こういうのにはどうも私は弱い。
ライター
メキシコ出身のアーティストと友達になったのだが、彼女は今、ポルトガルで折り紙を教えているそうな。彼女がリスペクトしているのが折り紙界の第一人者・吉澤章先生。で、いろいろ調べてみたら折り紙ってめちゃくちゃワールドワイド。『キル・ビル』といい、日本文化の奥深さを外国人によって教えられる今日このごろ。感慨深い。
 インファナル・アフェア.

警察に潜入するマフィアと、アフィアに潜入する警察官の抗争を描いたサスペンス・エンターテインメント。香港の2大スーパースター、アンディ・ラウ、トニー・レオンが主演。本国香港ではメガヒットを記録し、すでにハリウッドでのリメイク化権を各映画会社争奪戦の上ワーナー・ブラザースが獲得している。ヒロインには『冷静と情熱のあいだ』のケリー・チャン。監督は『恋する惑星』のアンドリュー・ラウ。二転三転する予測のつかない物語の展開と男たちの抑えた演技は重厚感ある一級のサスペンスに仕上がった。
日本公開: 10月11日(全国松竹・東急系)上映時間: 1時間42分
配給: コムストック



マフィアが刑事に化けてスパイし、刑事がマフィアに化けて潜入捜査するって設定から想像したのはリアリティとは無縁のトンデモ物語。香港映画はそこが面白い。ところがガチンコですわ。悪か? 善か? シビレたねぇ。少々無理もあるけれど、練られた脚本。そりゃハリウッドが買ったのも納得のよく出来た話。でも、エンドロールのラウとレオンのデュエット演歌はやめようよ。その歌詞がまた大爆笑。涅槃で待つby沖雅也って感じなんだ。わざわざ字幕を付けなくてもいいのに。


『HERO』で人生達観してる男を演じて、男を上げたトニー・レオン。本作では潜入捜査に疲れ果て、心身ボロボロ一歩手前でかろうじて踏み止まる男を演じてる。無精ヒゲ1本にまで哀愁が感じられ、シビレます。対するアンディ・ラウもエリート捜査官としての安泰な生活に身を置いて、裏社会には戻りたくない複雑な心情を体現。双方の見せ場たっぷり、クライマックスの対決シーンには心をわしづかみにされた。でも、彼ら以上に魅了してくれたのはトニーの上司を演じたアンソニー・ウォン。『ザ・ミッション 非情の掟』と同じく男臭い世界で、彼が放つ渋い味。「組織に生きる男のじくじたる思い」を物語るようで泣けた。ハリウッドでリメイクしたら、いったいこの役、誰が演じるんだ?


香港映画界お馴染みのキャスト&スタッフで新鮮味は全くないけど、これは騙されたと思ってみるべし。さすがはハリウッドがいち早く目につけ、リメイク権を獲得した映画だけのことはある。互いに身分を偽って生きているトニー・レオン&アンディ・ラウの心理戦がゾクゾクするほど面白い、重厚な人間ドラマだ。正直、こんなにスクリーンにのめり込んでみた香港映画は、『ラヴソング』以来かも。本作品にも出演しているエディソン・チャンを含め、香港映画界も若手発掘に精を出していたこともあったけど、演技面ではトニー&アンディにはかなわない。親父好きには老けて味も出てきた2人の今後が楽しみ。やっぱり男の真の魅力は40歳を超えてからだね。

 キル・ビル
『パルプ・フィクション』の鬼才クエンティン・タランティーノ監督5年ぶりの新作。東京、北京、メキシコ、ロサンゼルスと世界にまたがる悲しきヒロインの復讐劇を描いたバイオレンス・アクション・エンターテインメント。主演は『ガタカ』のユマ・サーマンが共演ルーシー・リューと共に本格的アクションに挑む。共演には千葉真一を始め日本の俳優も多数出演。ユマ・サーマンが日本刀を構えるスタイルはあまりにかっこよく、カリスマ的ニュー・ヒロインの誕生を予感させる。

日本公開: 10月25日(丸の内ピカデリー1他全国松竹・東急系)
上映時間: 1時間48分
配給: ギャガ・ヒューマックス共同配給


ひたすら日本。ただ、タラが日本をどこまでギャグとして使っていて、どこからカッコイイと思っているのか、その距離感がつかめない。たとえば、獅子おどしの音が竹の澄んだ音じゃなくてプラスティックのボコって音だったり、千葉真一のドタバタが寒かったり……。それも狙いか? 海外じゃ分かるまい。でも音楽は相変わらずのイイ選曲。アクションも過剰で良し。ユマのチャンバラはひどかったけど。それと外国人が日本語話すたびに、日本人の観客は大ウケするのやめてくれ。面白いこと言ってないって。


確信犯的なパクリというか、オマージュなんだか、それこそ「ヤッチマイナ」の勢いで、タランティーノが心酔したアジアンなものがテンコ盛り。千葉真一なんて、完璧タランティーノモードな自分を演じてるし、ハリウッド女優が飛ばすヤクザな日本語オンパレードにはヘソが茶を沸かすぜい! でも、海外じゃどんな反応になるのか?ルーシー・リュー扮する女親分が、御一行を率いて居酒屋の中を歩くシーンでは、トホホなニッポンが配信されてく気が。それにしても、あの“ウィークエンダー”のテーマソング(もともとは“鬼警部アイアンサイド”のテーマソングですが)や、梶芽衣子が歌う“修羅の花”など選曲センスもすんばらしい。とにかく全編、ツッコまずにはいられない。こんなバカバカしい映画を作ってくれて、ホーント、タランティーノよ、有難う!


映画冒頭の「この映画を師匠・深作欣二に捧げる」の一文から、私のハートはガッチリ捕まれてしまいました。日本&香港映画オタクのタラちゃんが、オタク度全開にして取り上げたこの映画。中でもサニー千葉や栗山千明の起用といい、格闘シーンでは『蒲田行進曲』の階段落ちありと、とりわけ深作監督への愛がいっぱい。中身もタラちゃん版『バトル・ロワイアル』だ。その愛情の示し方が、ちょいと間違っているような気もするが(笑)、きっと天国から深作監督も大笑いしながら映画の完成を祝福してくれているはず。でもユマ姉さん、いくら”ハットリ・ハンゾウ”(by「影の軍団」)に作ってもらった大事な刀だからって、機内持ち込みは禁止でっせ。

 リーグ・オブ・レジェンド


(C)2002 WENTIETH CENTURY FOX

『フロム・ヘル』の原作者としても知られるアラン・ムーア&ケビン・オニールのコミックをもとにしたアクション・アドベンチャー大作。『ブレイド』のスティーブン・ノリントンがメガホンを取り、『ソロモン王の伝説』のアラン・クォーターメイン、『海底二万里』のネモ船長、『トム・ソーヤーの冒険』のトム・ソーヤーら名作小説のヒーローたちがチームとなって世界平和に奔走する様を描く。キャストに名を連ねるのは、名優ショーン・コネリー、『ウォーク・トゥ・リメンバー』のシェーン・ウエストら。

日本公開:10月11日(日比谷スカラ座他東宝洋画系)
上映時間:1時間50分
配給:20世紀フォックス映画


その道の達人(?)たちが時空を超えて大集合して繰り広げる大活劇。ゲテモノ版の『七人の侍』といった趣向でそこそこに楽しめるんだけど、ちょっと物足りない。ゲテモノたちが得意ワザ(?)を披露するためのピンチの状況の作り方があんまりうまくないんだな。だから別にジキル博士(ハイド氏)やトム・ソーヤじゃなくても、ただ力の強い男と拳銃の名手で良かったりする。彼らの特性が活かせてないので、そこの作り込みがイマイチ。それとCGで作られた絵が見づらかったなぁ。


世界平和を守るため、ネモ船長にトム・ソーヤ、透明人間など冒険小説の世界で有名なヒーロー&ヒロイン7人が結束する。ってんだから、よほどの敵と思ったら、拍子抜けするほど小者。ちーとも凄みがない。こんな敵なら、年を食ったとはいえ、ショーン・コネリー演じる冒険家クォーター・メインだけでも十分な気がします。というか、7人のキャラをそれなりに説明しようとして、話はとっ散らかるし、ジキル&ハイドは超人ハルク化する……なんて聞いたこともないバカなキャラ設定に!? 荒唐無稽な中身とはいえ、ほどがあると思うぞ。 


ドラキュラとか透明人間とか伝説の超人たち総結集するこの映画。日本で作るなら、陰陽師から雪女、果てはゲゲゲの鬼太郎までもが集まって、彼らの力を利用して世界征服を企む話って感じか? さすがに鬼太郎はナシとしても、どう考えても滑稽極まりない、B級映画濃度の濃い映画である。小学生レベルの発想なのに、大金つぎ込んで作っているところが好きだけどね。でもいつも不満なのが、ショーン・コネリーが決して“死なない”ってこと。もういい年でいつまでもボンドじゃないんだから、せっかくスチュワート・タウンゼントら新星も出ているのに、“俺様”を強調するのもほどほどに。いい加減、年齢を自覚して欲しい。

 月曜日に乾杯
ベルリン映画祭で銀熊賞(監督賞)と国際批評家連盟賞をW受賞したコメディ・ドラマ。『素敵な歌と舟はゆく』の名匠オタール・イオセリアーニが監督を務め、変化のない毎日に嫌気がさし、気ままな旅に出かけた中年男性が自由を謳歌する様をゆるやかなタッチで綴る。いきなり旅に出る主人公ヴァンサンはもちろん、くわえタバコでスポーツカーを運転する彼の母親、覗きが趣味の好色な牧師、手紙を盗み読む郵便配達人、見栄っ張りな貴族など、奇妙で個性的な登場人物たちが魅力
日本公開: 10月11日(シャンテシネ)
上映時間: 2時間7分
配給: ビターズ・エンド


ボンヤリと見ていたらボンヤリと終っちゃった作品。寝てたわけじゃないんですけどね。生活に倦んだおじさんが旅に出るという話しだったんだねって、最後に気づいたりした。登場人物たちが心情を切々と語ったりしない。そこはリアルだし、押しつけがましくないのでイイんだけど、見る側が気合を入れていないと、ただのボンヤリ体験にお金を払うことになる。生活感溢れまくりのオジサン、オバサンたちが珍なるエピソードをドシドシ披露してくれるので、ツボにハマればハマるかも。


飲んべえなもんで、こういうタイトルには惹かれるものが……。で、ビンゴ! フラッと旅に出る主人公のオッサンがいいし、彼の家族もユニークだ。とくに年老いた母親のハイカラな姿は微笑ましい。ほか、ほんの脇キャラもしっかりストーリーに絡み、人間賛歌になっている。決してゴージャスじゃないのに、すごく豊かで贅沢な休暇。ああー、旅したくなった! 個人的ですが、スイスからイタリアに列車で旅行した時、主人公のように列車の中で友達になった人の家に泊めてもらって、ジモティ気分で遊び呆けたことがある。というわけで余計に共感、☆5つ。


基本的に酒飲みに悪いヤツはいないと思っている。アキ・カウリスマキといい、“グルジアの酔っぱらい親父”ことオタール親父といい、酒場で過ごすひとときが、彼ら独特の人生哲学を構築させたのだろうか。独特のユーモアで社会を風刺するその作風も魅力的だが、とりわけ下層階級に向ける目が優しい。この映画はヴェネチアが舞台。しかしこの映画が描くのは、観光都市としてではないヴェネチアの別の側面。私もヴェネアへ何度か行くたびに、ユダヤ人街があったり、狭い街なので悪評が広まると村八分状態になることを知った。それでも自分の人生に誇りを持って生きているヴェネチアの人が好きだ。そんな事をこの映画を見て改めて思った。

  恋は邪魔者

(C)2002 WENTIETH CENTURY FOX
ベストセラーを生み出したフェミニストの女性作家と、彼女を陥れようとする男性ジャーナリストの恋の駆け引きを描いたロマンチック・コメディ。監督は『チアーズ!』のペイトン・リード。主演には『シカゴ』のレニー・ゼルウィガーと『ムーラン・ルージュ』のユアン・マクレガーといった人気スター2人。一筋縄ではいかない恋模様の行方、ゼルウィガーが着こなすクラシカルでキュートな衣裳の数々、60年代NYを完璧なまでに再現したカラフルなセットなど、必見要素満載。

日本公開:10月18日(みゆき座他東宝洋画系)
上映時間: 1時間41分
配給: 20世紀フォックス映画


ありがちなラブロマンスかと思いきや、これが違う。今にも歌って踊りだしそうな、カラフルな非現実感を醸しだしながらもなかなか歌わないし、すぐにベッドインしそうなのにぜんぜんしないし……。こちらの予想を心地よく裏切ってくれるお見事な展開。ファッションにはさほど興味がないが、次々披露される大仰な服はギャグになってるので笑えたしねぇ。ラブコメなんてくくりで片づけられないユニークさ。でも、女優陣が不細工すぎじゃない? レニーの引き立て役? 意図的?


レニーもユアンも嫌いじゃない。それぞれ『シカゴ』『ムーラン・ルージュ』で歌も踊りも魅了できることを実証してるんで、そこは安心してられる。で、音楽のセンスもいい。しかし、ユアンが名うてのプレイボーイ役って、違和感が……。60'sの細身のスーツでジェームズ・ボンドばりにキメてるが、デカ顔とはアンバランスでまるで七五三だよ、ああ悲しい。で、レニーはコスチュームをキュートに着こなしてるものの、男をモノにするのにそこまでやるか? って聞きたくなるぐらい、策を弄する。いつも当たって砕けてばっかりの私には、まどろっこしくて、イラ、イラ、イラ~~ッツツツ!


60年代ファッションを散りばめた、一見、おしゃれ~な映画だけど、中身はビックリ。ちょいとネタバレになってしまうが、実は「SMAP×SMAP」で中居君が演じている“計算マコちゃん”もビックリな、すんごい計算高い女の話。レニー演じるヴィッキーの素顔が明らかになってからの展開というのは、それまでの薔薇色の世界から一転、私は引きまくって思いっきり現実社会へと戻されちゃいました。でもそれまでは、着せ替え人形状態のレニーちゃんのファッションや、インテリアなどなど目で楽しめるアイテムがいっぱい。加えて、ユアンの美声も聞けるので、ファッション映画として見に行けば程々の満足感を味わえます。

イラスト:micao
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本作の監督クエンティン・タランティーノは本アルバムのエグゼクティヴ・プロデューサーもつとめる。マイナー嗜好が炸裂し、究極のごった煮アルバムがここに誕生!

曲目リスト
1.バン・バン / ナンシー・シナトラ
2.サートン・フィーメール / チャーリー・フェザース
3.『怒りのガンマン 銀山の大虐殺』のテーマ / ルイス・バカロフ
4.『密室の恐怖実験』のテーマ / バーナード・ハーマン
5.クイーン・オブ・ザ・クライム・カウンシル
6.オウド・トゥ・オーレン・イシイ / RZA
7.ラン・フェイ・ラン -『THREE TOUGH GUYS』より / アイザック・ヘイズ
8.『グリーン・ホーネット』のテーマ / アル・ハート
9.バトル・ウィズアウト・オナー・オア・ヒューマニティ -『新・仁義なき戦い』のテーマ / 布袋寅泰
10.悲しき願い / サンタ・エスメラルダ
11.ウー・フー / ザ・5,6,7,8’s
12.クレイン / 『白熱』のテーマ / RZA / チャールズ・バーンスタイン
13.修羅の花 -『修羅雪姫』のテーマ 03:52梶芽衣子
14.ロンリー・シェパード / ザンフィル
15.ユー・アー・マイ・ウィキッド・ライフ
16.『鬼警部アイアンサイド』のテーマ(抜粋) / クインシー・ジョーンズ
17.空間美学PART2(抜粋)/ ノイ
18.ヤクザ・オーレン1 / RZA
19.バニスター・ファイト / RZA
20.フリップ・スティング
21.スウォード・スウィング
22.アックス・スロウズ


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