ウーマン村本の格言：度を超した復讐は自分に返ってくる
映画たて・よこ・ななめ見！
ジブリで宮崎駿監督の出待ちをしちゃうほど映画大好きな村本大輔と、映画に関しては素人同然の中川パラダイスが、あらゆる角度からブッ飛んだ視点で映画トーク。今回はナメてかかったらトンでもなく痛い目にあった……！ 盲目の老人が自宅に侵入した若者たちを狩るまさかの設定で話題のスリラー『ドント・ブリーズ』をななめ見しちゃいます！（取材・文：シネマトゥデイ編集部・入倉功一）
山田洋次監督でリメイクして！
村本：あのじいさん、目が見えへん割りに、家にはまあまあええセンスのクッションとか置いてたな。
中川：そうやった？
村本：全体的な色合いとか、おしゃれな女の子が「かわいい」って言いそうなインテリアやったで。
中川：そう言われると、生活力のあるじいさんやったな。
村本：うん。それにこの盲目のじいさん、何か憎みきれなくて悲しさを感じさせるのもいいよな。観れば観るほど深みが出てきそうな、一筋縄ではいかないホラーやで。
中川：共感できる部分があるのかねぇ。
村本：被害者だと思ったやつの方が、実は悪なんじゃないかというか。ホラーやけど、これはもう一種のヒューマンドラマやな。日本ではぜひ、山田洋次監督にリメイクしてもらいたい！
中川：なんで!? えらいコメディーになってしまう気がするけど。
村本：いや、ちょうどいい人情劇になるって。『家族はつらいよ』のチームでリメイクしていただいて。観たいわ～。
中川：妻夫木（聡）くんが、じいさんの家に盗みに入る若者で。
村本：そう！ 妻夫木くんや蒼井優ちゃんたちが、目の見えない橋爪功さんから逃げてね。
中川：なにそれ、ちょっと面白くなりそうやん！
村本：最後に殺される役は、林家正蔵さんにやってもらって（笑）。
中川：正蔵さん、映画で殺された奴らと違って普通にいい人そうやんか！
これだけは言いたい！ななめ見ポイント
村本：お笑いの世界で言うと、この映画は正統派のしゃべくり漫才（※話芸のみで行う漫才）を観た感じやな。今ってCGとか技術の発達でホラー描写もどんどん激しくなってきとるけど、アナログな、すごくオーソドックスな見せ方でもこんなに面白くできるんやなって。
中川：ここでじいさんが出てくるんちゃう？ と思ったところにやっぱり現れたりするのが気持ちいい！
村本：「来る来る来る来る……来るんかい！」みたいな。ジャルジャルのネタを見ているみたい。まだそれやるか、まだやるかって。その「しつこ！」っていうのがくせになってきて病みつきになっちゃう感じ。
中川：じいさんが出てくるたびに歓声を上げてしまうみたいな。
村本：そうそう。もうええって、もうええって……って思いながら観てしまう。
中川：そんで、出た！ やっぱり出た！ って。じいさんを待ってしまう自分がいるよな。
村本：最後の方はサーファーが波を待つかのように、ビッグじいさん来るか！ なんて。
中川：体が勝手にじいさんを求めてくる（笑）。
村本：見終わった後も、日常にあのじいさんを求めてしまいそうやで。寝る前も起きたときも。
中川：寝る前、カーテンの奥にじいさんがおるんちゃうかな……って考えたり。
村本：もうすぐクリスマスやから、煙突から入ってきたりしてな。ほんで子供にプレゼント渡して。
中川：それもう、ほとんどサンタやろ！
お笑い界最強のじいさんはこの人！
中川：お笑いの世界でいったら、最強のじいさんって誰やろ。
村本：最強っていったら、明石家さんまさんやろ。
中川：わかる！ 楽屋でもテレビで見るのとまんま同じテンションやからな！
村本：もう、ずーっとどこでも100％。あんな人、珍しいで。常にフルでわーっとしゃべって。とても61歳には見えへん。スタジオでも楽屋でも人を笑わせまくって、さっさと車に乗って帰っていくからな。
中川：しかも定期的に女の人と一緒のところとか週刊誌に撮られたり。もうすごい！
村本：ほんま、最強のじいさんやで。
中川：でもこの世界にいると、目の見えないじいさんが強かったみたく、こいつは大丈夫だろうと思ってたら実はやばい奴やった、みたいなことあるよな。
村本：いや、それもうおまえのことやろ……。最初会ったときは、ファニーでキュートに見えたのになぁ。
中川：今でもファニーでキュートやで！
村本：何を言うてんねん！ ふたを開けたら元カラーギャングで、ナメてたら柔道技で投げられて。
中川：そら、おまえが殴ってきたからやり返しただけやろ！
村本：いやいや、じいさんの家に凶暴な犬がいたやんか。あれ、おまえの家の犬にソックリやったで。
中川：チワワや！ あんなグロいよだれ垂らしまくりの犬と全然違うわ！
家に侵入した若者、返り討ちにしたじいさん、どっちが悪い？
村本：しかし、俺は若者たちより、あのじいさんに共感してしまったな～。
中川：そうなん？ 僕も最初は勝手に家に入られて、じいさん怒って当然やろって思ったけど、次第にヤバいじいさんやな……ってなったわ。
村本：俺は最後までじいさんを応援してたで！ たまにしょうもないグラビアアイドルとかが、あの芸人に口説かれたみたいなことを口説いてもいないのに暴露したりするやん？ しかも「こいつゲスいやつやから、ええやろう」みたいに相手を選んで暴露する。それがこの映画でいう若者たち。俺はこの老人よ。
中川：なるほど。
村本：そこで俺は、そいつらの隠していたことまで下調べして、全部暴露してやる。倍返しで復讐するわけや。そうなると、やり過ぎやって言われて最終的に俺だけが悪いみたいになるのよ！ これ、全くこの映画と一緒。やり過ぎた復讐は、こっちが悪いと言われてしまうというね。
中川：どっちも悪ではあると。
村本：自分がやった悪いことのぶんだけ、ばちが当たってる。このじいさんでいえば、過去にある事件があって、泥棒にまで入られるわけでしょう？ それで「神様はいない、信じない」と言ってたけど、それとは関係なく、自分がやった悪いことのぶんだけばちが当たっている。この老人も若者たちも、結局はプラマイゼロになっているように見えて、本当は神様はおるってことを、教えられた気がするわ。
中川：へえ、面白い解釈やな～。
村本：しかし、今年はこういう映画多かった気がするなぁ。俺はね、もっと優しい映画が観たいのよ。『怒り』なんかも名作やったけど、ちょっとイヤな気持ちになる映像が多かったりするやん？ 前回の『ブリジット・ジョーンズ』とか、ああいうので名作に出会いたい！
中川：僕はやっぱりホラーがええな～。ハラハラするのが好きやから、そうなるとホラーが一番！
村本：おまえはただホラーを観たいだけやんか！ 俺の方がコメント力があるわけやから、こっちに合わせようや。ほんまに、来年はそこんところお願いします！
今月の激オシ映画はコレ！
盲目の老人宅に強盗に入った若者たちが、反撃に遭う恐怖を描くスリラー。リメイク版『死霊のはらわた』などのフェデ・アルバレス監督がメガホンを取り、オリジナル版のサム・ライミ監督と、ライミ監督とタッグを組んできたロブ・タパートがプロデュースを手掛けた。目は見えなくとも研ぎ澄まされた聴覚を持つ老人に『アバター』などのスティーヴン・ラングがふんし、リメイク版『死霊のはらわた』などのジェーン・レヴィ、『プリズナーズ』などのディラン・ミネットらが共演する。
ウーマンラッシュアワー・プロフィール
2008年に結成された、村本大輔と中川パラダイスによるお笑いコンビ。2011年「ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞受賞、2012年「THE MANZAI 2012」決勝進出、2013年NHK上方漫才コンテスト優勝など数々の賞に輝き、4月に東京進出。先ごろ行われた「THE MANZAI 2013」で見事優勝し、3代目王者に輝いた。
村本大輔 1980年生まれ。福井県出身。自分でも「ネットに書き込まれるうわさはほとんどが事実です！」と認めている、自称・ゲス野郎芸人。だがその一方で、ジブリ作品やピクサーなどの心温まるアニメが大好きで、映画『あなたへ』で号泣するほどのピュアな一面も持ち合わせる大の映画好き。水産高校に通っていたため（中退）、お魚系や海洋ネタにも意外に詳しい。「AbemaNews」チャンネルのニュース番組「AbemaPrime」（毎週月～金曜日21:00～23:00生放送）にて月曜レギュラー出演。
中川パラダイス 1981年生まれ。大阪府出身。これまで10回もコンビ解散している村本と唯一トラブルもなくコンビを続けている広い心の持ち主。2012年に入籍し、現在1児の子育てを満喫中のイクメンパパでもある。映画に関しては、「王道なものしか観ない」というフツーレベル。
