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大倉忠義、やっぱり映画っていい『窮鼠はチーズの夢を見る』インタビュー

窮鼠

 水城せとなの人気コミックを実写映画化した『窮鼠はチーズの夢を見る』。優柔不断な性格で受け身の恋愛ばかりしていた主人公・大伴恭一を演じているのが関ジャニ∞大倉忠義だ。ある事柄をきっかけに、大学時代の後輩・今ヶ瀬渉(成田凌)から猛アタックを受け、一緒に暮らし身体を許すことになった恭一。劇中では成田との大胆なラブシーンに挑むなど、新たな顔を見せた大倉が「苦しかったけれど、充実感でいっぱいだった」という撮影を振り返った。

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ためらいはなかった

窮鼠

Q:大倉さん演じる大伴は大学の後輩・今ヶ瀬に迫られ受け入れてしまう人物でした。最初お話を聞いたときはどんなお気持ちでしたか?

「こういう役かー」というぐらいであまり特別な感情はなかったです。原作を読ませていただき、ファンの方が支持している世界観も理解できたので(男性同士のラブシーンも)絶対あるだろうなとは思っていました。ためらいもなかったですし「腹をくくってやらなければ」みたいな気負いもなかったです。逆に女性とのラブシーンの方が「マジかー」ってなってしまいます(笑)。

Q:メガホンをとった行定勲監督は、大倉さんに断られるかもしれないと思っていたようですが、出演にためらいはなかった?

行定監督とはご一緒したいなと思っていたので、まったくなかったです(笑)。

Q:同性とのラブシーンを演じるということでかまえる部分はありませんでしたか?

ほぼ順撮りだったので、最初の出会いから芝居ができたのはありがたかったです。大伴はストレートなので、最初は「しらふでいきなりキスか!」みたいなところはあったのですが、ストーリーに入っていくうえで、抵抗がなくなっていく感じをリアルに体験できたので、途中からは女性と恋愛映画を撮っているような温度感で進められました。多分、男同士ということで、男女の恋愛では描かなくてもいい部分も丁寧に行定監督が撮ってくださったことは大きかったです。男同士の恋愛ということで、色ものに見られてしまうかもしれませんが、丁寧な恋愛映画だと思います。

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物事に没頭できる性格だから続けてこられた

窮鼠

Q:恭一は今ヶ瀬の思いに押されていくような感じがありました。

今ヶ瀬は恋愛に生きているような人。そんな彼を間近で見て、あまり一つのことに没頭してこなかった恭一は、ある意味で新鮮だったと思うんです。どうしてそこまで恋愛にのめり込めるんだろうって……。一般的には、世間的な常識に縛られ、対人関係もある程度距離をとって生きている恭一みたいな人って多いと思うんです。

Q:大倉さん自身は、どちらのタイプですか?

仕事柄もあるのかもしれませんが、僕の周囲には一つの物事に没頭する人が多いですね。僕自身も、没頭できたからこそここまで続けてこられたと思います。特にこういう作品に入っているときは、没頭できないと周囲についていけない。なにより行定監督がすごい熱量で向き合っていたので、中途半端な気持ちではダメだと、こちらも相当気合が入りました。

Q:行定監督とは撮影現場でどんなお話を?

現場では結構会話をしたのですが、演出というよりは、シーンが終わったあと「あのシーンはなんであんな顔していたの?」とか「どんな気持ちで演じていた?」みたいなことを聞かれることが多かったです。

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成田凌の役へのアプローチ方法に脱帽!

窮鼠

Q:成田凌さんとはかなり濃厚なラブシーンをはじめ、対峙する場面が多かったですね。撮影前には打ち合わせなどはしたのですか?

芝居の話はまったくしませんでした。最初にちょっと会話をして、そこからは劇中と同じ距離感のままでいきました。

Q:成田さんとお芝居を一緒にしてみて、どんな印象を持ちましたか?

この作品は成田くんと行定監督じゃなければできなかったと思いました。成田くんは、ゲイというセクシャリティーを演じるために、周囲の話を聞き、目の潤いが印象に残ったようで、それを軸に芝居を作っていったというのがとても面白いなと思いました。やけに目がウルウルしているなと現場で感じていたんです。彼が演じる今ヶ瀬が魅力的だったので、大伴も自然と惹かれていったんだと思います。

Q:今ヶ瀬の大伴に対する執着は、大倉さん的には理解できましたか?

依存なら分かるのですが、振りむいてくれない人に、ここまでの執着は理解できませんね(笑)。大伴がストレートだからこそ、あそこまで気持ちを出さないと落とせないという部分は理解できるのですが、自分だったら傷つきたくないという気持ちが先に来てしまって、彼の二割ぐらいで諦めちゃいます。

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映画の素晴らしさが実感できる撮影

窮鼠

Q:今回こういう役を演じましたが、次に挑戦してみたい役柄はありますか?

女性とのラブストーリーをしたいですね。実は、2017年に上演された舞台「蜘蛛女のキス」でも、渡辺いっけいさんと毎日キスしていたので……。この映画でも女性の方とのラブシーンはありましたが、女性と恋愛する役をまたやってみたいです。あとは、久々の映画の現場だったのですが、やっぱり映画っていいなと思いました。

Q:それはどんな部分が?

会話のテンポもそうですが、映画の間というか流れる時間が素敵だなと……。大きなスクリーンで観るということもあると思うのですが、語らずの表情でも魅せられるところなど、映画の素晴らしさが実感できる撮影でした。

Q:行定監督とのタッグもまたぜひという感じですか?

そうですね。撮影が終わったあと、行定監督とご飯を食べたのですが、そのとき「生々しいドクズなんていいんじゃない?」と言っていただけたんです。でも監督が「またやろうと言って3~4年やっていない人がたくさんいる」と話していたので、自分もその一人なのかなと思ったり……(笑)。

Q:本作を観て大倉さんのファンはどんな感想を持つと思われますか?

どういう目で観るんだろうな……という興味はあります。ただ価値観というのは人それぞれ違うので、いろいろな角度から観ていただき、好き勝手に言ってもらえればと思っています。そんななかでも、どこか、なにか心のなかにいいものが残ってくれたら嬉しいです。

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取材後記

関ジャニ∞でのアイドル活動、ドラマーとしてのアーティスト活動、さらに舞台、ドラマ、映画と多岐に渡る俳優活動……。大倉忠義にとって「どれも欠かせない仕事」とそれぞれの相乗効果を強調するが、どの表現活動にも共通するのが「お客さんに届いた」と感じたときの充実感だという。ライブのステージに出たときのファンの反応、作品が完成し、観客に観てもらったときの反響……大倉にとってはかけがえのない時間となる。その意味で本作は、これまでの作品以上に大きな反響があるかもしれない。「好き勝手言ってほしい」と最後に込めた言葉が、作品に対する自信にも感じられた。(取材・文:磯部正和)

映画『窮鼠はチーズの夢を見る』は全国公開中

映画『窮鼠はチーズの夢を見る』オフィシャルサイト

(C) 水城せとな・小学館/映画「窮鼠はチーズの夢を見る」製作委員会

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