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岡田准一、実写のヒットが難しい時代で「救いになる」作品との出会い

岡田准一
岡田准一 - 写真:上野裕二

 藤井道人監督と初タッグを組んだ映画『最後まで行く』(5月19日公開)で、不運に巻き込まれていくダメ男を演じてさらなる新境地を開いた岡田准一。予測不能な展開で突っ走る、熱気に満ちた映画が完成したことに「心から面白い映画ができたと思っている」と自信をみなぎらせる。“世界で通用する映画を日本から送り出す”という夢を抱きながら邁進している岡田だが、藤井組のメンバーや共演者の綾野剛らと高みを目指すものづくりの日々を過ごし、「希望を感じた」と充実感もたっぷり。本作の撮影を振り返りながら、壁にぶち当たることばかりだという俳優業への思いまでを語った。

【動画】岡田准一VS綾野剛、予告編

年下の監督と組むのは初めて

『最後まで行く』より岡田准一演じる刑事の工藤(C) 2023映画「最後まで行く」製作委員会

 本作は、『新聞記者』『ヤクザと家族 The Family』『余命10年』の藤井監督が、韓国で大ヒットを記録した映画をリメイクしたクライムサスペンス。“ある男”を車ではねてしまったことを発端に、悪夢のような災難が降りかかり極限まで追い詰められていく刑事・工藤(岡田)の姿を描く。工藤を追う県警本部の監察官・矢崎を綾野が演じ、岡田と綾野によるノンストップの攻防戦が大きな見どころ。衝撃のラストまで、息もつかせぬ展開でくぎづけにする。

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 日本アカデミー賞最優秀作品賞に輝いた『新聞記者』をはじめとする社会派サスペンスや青春映画、純愛ラブストーリーなど幅広い作品を手掛けてきた藤井監督について、岡田はもともと「藤井さんは、素晴らしい監督だなと思っていた」と興味を持っていたそうで、念願かなってのタッグとなった。「いろいろと毛色の違う作品を撮ろうとされている監督だなと。どの作品もクオリティーが高く、僕自身、“世界で通用する映画を日本から送り出す”ことを夢として持ち続けているので、藤井監督はそういった意味でも貴重な存在だなと思いながら、彼の手掛ける作品を観ていました」と大いに共鳴していた様子だ。

 現在42歳となった岡田だが、年下の監督とタッグを組むのは今回が初めてのことだという。

 「年齢はあまり関係ないとは思いますが、これまで映画をやってきた僕が、年上としてどのような参加の仕方ができるのか。僕なりに現場での正しいあり方とはどのようなものだろうと考えていました」と座長として覚悟しつつ、「信じられる監督だったので、とにかく藤井監督の考えるものを信じて、頼られたら応えますし、サポートできることをやっていこうという考え方です」と信頼を吐露。藤井監督が秀でている理由については、「ジャッジメントが早い。そして大事なところで決して間違わない」と力強く語り、「核となる芝居の筋が通っていないとOKが出ない。スタッフ、キャスト一人一人に課しているものや、求めてくるものも大きいので、皆が本気で現場にぶつかっていく。ものすごく楽しいですよ」とものづくりの理想が詰まったような撮影現場だと目尻を下げる。

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綾野剛にハラハラし通し

工藤を追い詰める監察官の矢崎(綾野剛) (C) 2023映画「最後まで行く」製作委員会

 執拗かつ冷酷なまでに工藤を追い詰めていく矢崎を、綾野が不気味な雰囲気を漂わせて演じている。岡田は「綾野さんに追い詰められていく人物を演じるのは、今までの映画人生の中で一番エネルギーを使った」と苦笑い。

 「本気で殴ってきそうな気迫がありますからね(笑)」と綾野の放つ狂気のオーラに驚きつつ、「工藤と矢崎が車で並走するシーンがあるんですが“綾野さんが車を本当にぶつけてくる可能性だってある”“何か、思わぬことがあるかもしれない”と感じさせるような役者の方です。ご自身で痛みを伴いながらお芝居をされるタイプの役者なので、こちらも対峙する上では覚悟しないといけない」とエネルギーを使ったのは、綾野が油断ならない役者であるからこそ。

 「『SP 野望篇』(2010)という作品で綾野さんに、1シーンだけ出演していただいたんです。その時から“いつか共演したい”と思ってくれていたようで、“准一さん”と話しかけてくれたり、僕のことを好きでいてくれることが伝わってくる。今回僕は、アクションの構成にも参加させてもらいましたが、アクションをつくっていると後ろから綾野さんが見ていて、“准一さん、最高です”と言ってくれたりして」と笑いながら、「アクションをつくり終えた後に誉めてくれたりもして、そうやって頼ってもらえて助かりました」と綾野に励まされることも多かったと話す。

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 熱っぽく語る岡田の姿からも、全員で同じ方向を見つめながら走り抜けた撮影現場がいかに心地よいものだったのかが伝わってくるが、「ずぶ濡れになって挑む撮影があったり、力を入れすぎて筋肉痛になるくらい寒い中でアクションをしたりと、もちろん大変なこともありました。でも今回の現場は皆がエネルギッシュに現場に打ち込み、それでいて誰一人として諦める人もいない。クリエイティブに対してネガティブな考えを持っている人がいなかった」とキッパリ。「藤井監督の周りには30代のスタッフがたくさんいらっしゃいますが、どんな業界であれ、“30代が元気でないとその業界はつぶれる”というのが僕の持論であって。監督はもちろん、藤井組にはこれだけ個性の強い、才能ある、元気な30代がそろっていると思うと、日本映画界の希望だなと思いました」と光を感じていた。

役者をやっていると潰れそうになる瞬間もある

 クランクインは2022年の1月15日、クランクアップが同年12月25日と、コロナ禍で撮影を一時中断しながら、完成に漕ぎつけた。映画づくりにはアクシデントもつきものであり、過酷な役づくりや多くの苦労を重ね、作品が完成した後には容赦ない評価にさらされるなど、俳優というのは何ともハードな仕事であるようにも感じる。俳優業に臨む上で、キャリアを積んだ岡田であっても「壁にぶち当たることもあります」と告白。その壁を乗り越える助けとなるのは、「今回の現場のように、しんどいことを楽しめるような希望があること」だとも。

 「頑張っているプロデューサーや、粘ってくれる監督に対して“応えなければいけない”というプレッシャーを背負うこともありますし、役者をやっていて責任について考え出したら潰れそうになる瞬間なんて山ほどあります」と打ち明けながら、「実写のヒットが難しいと言われる時代で“つくった責任を取らなければ”と気負うこともあるけれど、“世界に誇れるエンタテインメント映画をつくりたい”という監督がいて、心から面白いと思える今回のような映画がつくれるのであれば、“まだまだ面白いものがつくれる可能性がある”と感じられる。自分としても、こういう作品をオファーしていただけたことは、“救い”だと感じています」と熱を込める。

 「観ていただけたら、絶対に面白いと思ってもらえるはずです。僕は出来上がる前から面白いと思っていて、出来上がってからも心から面白いと思っています」と本作への誇りを胸に、「この作品を観てもらえるのか、観てもらえないのかというのは、“面白いものをつくれば観てもらえるんだ”という、日本映画の一つの指標になるかもしれない」と観客の反応に期待を寄せていた。(取材・文:成田おり枝)

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