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山崎賢人のマイルール「頭は常にクールで」 経験が結実した安倍晴明役

山崎賢人
山崎賢人 - 写真:TOWA

 ビッグタイトルを次々と大ヒットに導いている山崎賢人(※崎は「たつさき」)。超売れっ子の彼が、近年の映画『キングダム』シリーズ(2019、2022、2023、2024)や『ゴールデンカムイ』(2024)とはガラリと異なる魅力を見せるのが『陰陽師0』(4月19日公開)だ。夢枕獏のベストセラー小説「陰陽師」シリーズに登場する実在の呪術師・安倍晴明は、これまで何度も映像化されてきたが、山崎が本作で演じるのは、まだ学生だった若かりし日々の晴明。近年とみに極めて高い身体能力を見せつけてきた山崎が、本作では一味違う“雅なアクション”にも臨んでいる。山崎が、本作への外的&内的アプローチの裏側、常に撮影現場で自身に課しているルールについて語った。

山崎賢人が美しい手印を披露!インタビューカット<7枚>

 監督は、原作者・夢枕獏が「『陰陽師』を映画化するならこの人に」と名指しで希望した、『K-20(TWENTY) 怪人二十面相・伝』『アンフェア』シリーズなどの佐藤嗣麻子。陰陽師や呪術を研究し尽くした佐藤監督がオリジナル脚本を執筆し、日本呪術界の第一人者で小説家の加門七海が呪術監修として参加。その世界観をVFXで補完するのは、先ごろ『ゴジラ-1.0』で米アカデミー賞視覚効果賞を受賞した白組だ。

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 劇中に現出された平安時代の雅な世界観を、山崎は「セットや美術にもこだわりが詰まっていて、本当に美しかったです。セット内ではお香が焚かれていて、床にはお花が敷かれ、さらにそれをライティングで際立たせていて。とても長い着物を着た徽子女王(奈緒)も本当に綺麗でした!」と実感のこもった口調で思い返す。

 そんな時代を生きた若き晴明を演じるにあたって、山崎は「まず(背中に)一本筋が通ったような、美しく見える姿勢に正しました」と明かす。「衣装を着た状態でいかに美しく見えるか。袴に合う動き方として、歩く時も座る時も立ち上がる時も、“よっこらしょ”と動くのではなく、一瞬でスッと動作が完了するような感じ。難しかったのは、袴が引っ掛かりやすいこと。袴を邪魔しない動きを指導していただきました」。そうして体得した優雅な立ち居振る舞いが、いともたやすく呪術を操る天才呪術師・晴明の、どこか浮世離れした風情に繋がっている。

映画『陰陽師0』より山崎賢人演じる若かりし安倍晴明 (C) 2024映画「陰陽師0」製作委員会

 特に目を引くのが、手印をサッと繰り出す山崎の“手”の美しさ。「呪術を唱える際に手印を結ぶので、指が柔らかく動くように曲げたり伸ばしたり、指のストレッチを常にしていました。それによって指使いや可動域がかなり変わるんです。ただ、最初はかたくて指を大きく開くことも難しかったので、鍼も打ってもらいました」と、長い指で鮮やかに手印を披露する。

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 外見・肉体的アプローチの一方で、トラウマや悲しみを秘めた晴明の複雑な内面にどうアプローチしたのか。若き日の晴明は、呪術の天才と言われながら陰陽師に興味を示さない変わり者でもあった。山崎は「晴明は、真実だけを見ようとしている人。まだ(両親の死を巡るトラウマを)乗り越えてない状態である、という柱を自分の中で一本持って臨みました」と振り返る。

安倍晴明と源博雅(染谷将太)のコンビはサイコー!(C) 2024映画「陰陽師0」製作委員会

 いわばツンデレな晴明が唯一、“デレ”の部分を微かに覗かせるのが、染谷将太演じる天皇の孫である源博雅とのやりとりだ。「といっても、この段階での晴明には人生を楽しむような余裕はないので、博雅をからかうシーンにしても、心底楽しんでいるわけではなくて。感情もあまり表さないけれど、性格が悪く見え過ぎないようには気を付けました。例えば相手を“バカ”と言うにしても、晴明からすると悪口ではなく、単に事実を述べているだけというか(笑)。そんなところが面白いと思いながら演じていましたが、博雅とのやりとりはどこか可愛げのあるものになるよう強く意識して、温度のある人間として演じたつもりです」

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 晴明と博雅としての、染谷との一連のやりとりは、「本当にキャッチボールみたいで、染谷くんに引き出してもらった部分もたくさんありました」と刺激的だった様子がうかがえる。「染谷くんとは(ドラマ)『時効警察はじめました』(2019)以来だし、ここまでガッツリ組んだのは初めて。ずっと尊敬してきたし、どんな風にアプローチするのかな、どうやって演じるのかなと気になっていたので、すごく面白かったです。染谷くんでも緊張するのか、とか少しだけ意外な一面を知れたのも含めて、全てが面白い経験でした」

 終盤は、怒濤のアクションになだれ込む。博雅が密かに思いを寄せる徽子女王の周辺で起きる怪奇現象に、博雅と共に立ち向かう晴明は、朝廷を揺るがす大事件に巻き込まれていく……。山崎は、「今回は相手を倒すのではなく、“いなしていく”アクション。これまでとは別種のアクションなので、アプローチも全く違いました。どこか人間の動きではないような、舞っているような動きを目指して。アクション監督の園村健介さんが、(フィギュアスケーター)羽生結弦さんの演目「SEIMEI」からインスピレーションを受けたというのも面白いなと。僕もそれを見て無重力感を意識しました」と新たな挑戦の撮影裏を明かす。さらに、「これまで、力の入ったアクションをやって来た経験値があるからこそ、自分の中で何となく抜き方がわかるというか。どんな経験も生きているな、と実感しました」と精悍な表情を見せる。

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 本作のように燃えたぎる思いをポーカーフェイスの下に隠して淡々と目的に近づいていく役もあれば、全身から感情を爆発させてアクションに乗せる役もある。そんな山崎には撮影現場で常に心がけていることがあるという。「感情的なお芝居をする時であっても、頭はクールでいること。特にアクションシーンでは、状況を客観視していないと危険も引き起こしかねない。気持ちやハートは熱く燃えているけれど、頭はクールに。それはアクション以外の普段のお芝居にも生きるので、常に心掛けています」

 役づくりにはとことんストイックな彼だが、一方で「それ、実は誰かに言われた言葉ですが、誰だったかは忘れてしまって(笑)」とぶっちゃける、おおらかで飾らない人柄も覗かせる。「でも演技以外でも、何か物事を成し遂げる時すべてに共通して言えることだと思いません? 感情はブチ切れているけど、頭はクールに淡々と。ね?」

 そうチャーミングに語る彼の姿から、軽々と役をモノにする秘訣の一端が垣間見える。『陰陽師0』における晴明の姿に、この不安な時代の闇や災厄を振り祓うかのような、清々しさと憑きものが落ちたような軽やかさを感じるハズだ。(取材・文:折田千鶴子)

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